コラム
通信制高校が「人生終わり」と言われる理由とは?現実や後悔しないためにやるべきこと、メリットを解説

「通信制高校へ行ってみたい」と誰かに話したとき、「通信制高校なんて言ったら人生終わり、やめた方がいい」と言われたことはないでしょうか。どうしてそんな考えが広まっているのか、そして現実はどうなのかを解説いたします。
また、通信制高校での生活を成功させるためにやるべきことや、通信制高校ならではのメリットもお伝えします。
通信制高校が「人生終わり」と言われる理由とは?
はじめに、「通信制高校へ行くなんて人生終わり」といった意見がなぜ広まっているのかを考えます。大きく分けて4つの理由で、このようなことを言う人がいるのではないでしょうか。
「普通は全日制高校を選択する」から?
まず、通信制高校へ通う生徒の人数が圧倒的に少ないことが挙げられます。文部科学省の調査によると、2020年(令和2年)に全日制高校へ通っていた生徒は301万2,708人。それに対し、通信制高校へ通っていた生徒は20万6,948人と、全体のわずか6.3%です。

出典:「高等学校教育の現状について 令和3年3月 文部科学省 初等中等教育局 参事官(高等学校担当)付」
一見すると、確かに「通信制高校には100人のうち6人しか行かない」となると少数派と考えられるでしょう。「普通の子は全日制高校へ行くのに」「みんな全日制高校なのになぜ?」と“周りと違う選択をすること”を不思議に思う人もいるかもしれません。
しかし実のところ、通信制高校へ通う人は年々増加傾向にあるのです。1985年(昭和60年)からおおむね増え続けており、令和2年は過去最多の20万6,948人を記録しています。

出典:「高等学校教育の現状について 令和3年3月 文部科学省 初等中等教育局 参事官(高等学校担当)付」
「親や周囲によく思われない」から?
次に、周りの人がどう思うかを気にする人もいるのではないでしょうか。「みんなのように全日制高校へ行かないと普通の高校生活をおくれない」「周りは変に思うかもしれない」と親などの家族から心配されたり、反対されたりしている人もいるかもしれません。
しかし先ほど触れたように、通信制高校の生徒は増えています。長年にわたって少子化と叫ばれるほど子どもの数が減少している中、通信制高校へ行く人数は増え続けているのです。つまり割合としても、通信制高校へ通う人は年々増え続けているということ。
また近年は、通信制の高校自体も多く設立されています。特に私立は、年々増加傾向に。通信制高校へ通うチャンスも増えているのです。

(高等学校通信教育の現状について 令和2年1月15日 文部科学省 初等中等教育局 参事官(高等学校担当)p.4)
現時点では少数派かもしれませんが、今後、通信制高校を選ぶことはスタンダードになるかもしれません。「一般的な道ではない」と気になる人も、あまり不安にならなくても良いのではないでしょうか。心配してくれる親の気持ちにも感謝しながら、自身の気持ちや選択を大切にしたいですね。
「中退率が高い」から?
さらに、「通信制高校は退学する人が多い」という話を耳にすることもあるのではないでしょうか。
文部科学省の調査では、平成30年度(2018年度)に通信制高校を退学した生徒は、通信制高校全体で5.8%。高校生全体の退学率が1.4%という調査データもあり、それと比べると通信制高校の退学率は高いことがわかります。
なお、私立高校のパーセンテージは5.0%。20人に1人が退学している計算です。公立よりも低く、また年々下がってきてもいます。まだまだ学校全体と比べると高い退学率ですが、私立高校側の手厚いフォローもあってか、改善が見られるようです。
公立 | 私立 | 計 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
実数(人) | 割合(%) | 実数(人) | 割合(%) | 実数(人) | 割合(%) | |
H16 | 5,860 | 5.7% | 9,367 | 9.7% | 15,227 | 7.6% |
H17 | 5,715 | 5.6% | 7,017 | 6.8% | 12,732 | 6.2% |
H18 | 5,852 | 6.0% | 7,340 | 7.1% | 13,192 | 6.5% |
H19 | 5,984 | 6.2% | 6,409 | 6.0% | 12,393 | 6.1% |
H20 | 4,914 | 5.1% | 5,848 | 5.4% | 10,762 | 5.3% |
H21 | 5,595 | 5.9% | 5,709 | 5.1% | 11,304 | 5.5% |
H22 | 5,981 | 6.3% | 5,670 | 4.9% | 11,651 | 5.5% |
H23 | 5,908 | 6.5% | 5,799 | 4.8% | 11,707 | 5.5% |
H24 | 7,205 | 8.2% | 6,538 | 5.2% | 13,743 | 6.5% |
H25 | 6,179 | 7.6% | 6,768 | 5.4% | 12,947 | 6.2% |
H26 | 6,178 | 8.0% | 6,776 | 5.3% | 12,954 | 6.3% |
H27 | 5,546 | 7.6% | 7,546 | 5.8% | 13,092 | 6.4% |
H28 | 5,531 | 8.2% | 7,102 | 5.3% | 12,633 | 6.2% |
H29 | 5,300 | 8.2% | 6,805 | 4.8% | 12,105 | 5.9% |
H30 | 4,669 | 7.5% | 7,526 | 5.0% | 12,195 | 5.8% |
(出典)文部科学省「学校基本調査」
文部科学省 初等中等教育局 参事官(高等学校担当)『高等学校通信教育の現状について』p.13
「進学や就職で不利になりやすい」から?
通信制高校への進学を検討していると、「通信制高校は進学や就職に不利」という話も聞くかもしれません。
ではまず、通信制高校の進学状況を見てみましょう。文部科学省によると、平成30年度の通信制高校の卒業者56,283人のうち、大学等進学者は10,104人(18.0%)、専修学校進学者は13,173人(専門課程と一般課程の合計/23.4%)です。計41.4%が進学しているということです。
なお、私立高校の大学進学者は公立高校の10倍です。私立の卒業者数は公立高校の6倍と卒業者の人数も多いですが、それを含めて考えても、私立の進学率は高いと言えるでしょう。
卒業者数(人) | 大学等進学者 | 専修学校(専門課程)進学者 | 専修学校(一般課程)等進学者 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
実数(人) | 割合(%) | 実数(人) | 割合(%) | 実数(人) | 割合(%) | |||
全日制 | 1,030,982 | 571,900 | 55.5% | 168,732 | 16.4% | 52,357 | 5.1% | |
定時制 | 19,577 | 2,408 | 12.3% | 3,327 | 17.0% | 478 | 2.4% | |
通信制 | 計 | 56,283 | 10,104 | 18.0% | 12,212 | 21.7% | 961 | 1.7% |
公立 | 7,982 | 893 | 11.2% | 936 | 11.7% | 138 | 1.7% | |
私立 | 48,301 | 9,211 | 19.1% | 11,276 | 23.3% | 823 | 1.7% |
(出典)文部科学省「学校基本調査」文部科学省 初等中等教育局 参事官(高等学校担当)『高等学校通信教育の現状について』p.15
次に、通信制高校の就職率はどうでしょうか。平成30年度(2018年度)に通信制高校を卒業した生徒の就職率は19.6%(令和元年5月1日現在)。約5人に1人が就職しています。むしろ就職率は、全日制高校と比べて通信制高校の就職率のほうが高いのです。こちらを見れば、就職に不利という印象はありません。
卒業者数(人) | 公共職業能力開発施設等入学者 | 就職者 | 左記以外の者 | 不詳・死亡の者 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
実数(人) | 割合(%) | 実数(人) | 割合(%) | 実数(人) | 割合(%) | 実数(人) | 割合(%) | |||
全日制 | 1,030,982 | 5,459 | 0.5% | 176,936 | 17.2% | 55,458 | 5.4% | 140 | 0.0% | |
定時制 | 19,577 | 489 | 2.5% | 8,237 | 42.1% | 4,615 | 23.6% | 23 | 0.1% | |
通信制 | 計 | 56,283 | 426 | 0.8% | 11,026 | 19.6% | 21,070 | 37.4% | 484 | 0.9% |
公立 | 7,982 | 59 | 0.7% | 1,745 | 21.9% | 4,091 | 51.3% | 120 | 1.5% | |
私立 | 48,301 | 367 | 0.8% | 9,281 | 19.2% | 16,979 | 35.2% | 364 | 0.8% |
(出典)文部科学省「学校基本調査」文部科学省 初等中等教育局 参事官(高等学校担当)『高等学校通信教育の現状について』p.15
通信制高校で人生終わりにしないためにやるべきこと
これまでお話してきた通り、「通信制高校に入ったら人生終わり」ではありません。ですが高校生活の送り方によっては、「もっと頑張ればよかった」と後悔してしまうこともあるでしょう。そこで、通信制高校に進んだときにやるべきことをご紹介します。
自分なりの目標を明確に持つ
通信制高校を検討することになったのは、何かしらの理由があるのではないでしょうか。例えば「体調を崩すことが多いから、オンライン授業メインで勉強して大学受験に備えたい」「勉強についていけず退学してしまったけれど、もう一度頑張って高校を卒業したい」「他に打ち込みたいこと(スポーツなど)と両立しながら学べる高校へ行きたい」など、人それぞれです。このように「成し遂げたいこと」を明確にしましょう。
進学や就職における面接では、「どうして通信制高校を選んだのですか」と質問されるかもしれません。そんなときは自分が選んだ理由や、通信制高校生活で熱心に打ち込んだことを伝えれば、自分の強みや意欲をアピールできるのではないでしょうか。
高校生活のマイルールを作る
通信制高校は基本的に、毎日登校して授業を受ける必要はありません。その分オンライン授業や自習、レポート作成などで勉強を進めていきます。このように自由度が高いところが通信制高校の魅力ですが、生活リズムが乱れてしまう人も多いようです。不摂生な生活で体やメンタルが不調になったり、レポート提出ができなかったり、いつの間にか授業についていけなくなったり……など、良いことはあまりありません。
そのため、自分なりの高校生活のマイルールを作ることが大切です。「毎日同じ時間に起きて寝る」「授業のない○曜日はバイトから帰ってきたらすぐに自習する」などを決めてしまうのです。
また通信制高校の中には、「全日型」といって全日制のように月曜から金曜まで毎日通う高校や、週3日登校など、登校頻度の高いところもあります。そちらのほうがうまくいきそうな人は、ぜひ検討してみましょう。
学習サポートしてもらう
小中学校の勉強が苦手だった人や、高校の授業についていくことができずに退学となった人もいるかもありません。毎日登校する必要がない通信制高校では、自習の時間も多いです。「無事に卒業できるか不安……」という人は、通信制高校の先生からの学習サポートを積極的に受けることをおすすめします。また必要に応じて、高校での勉強に加えて、学習塾に通うのも良いでしょう。
例えば授業や自習の中でわからないことがあったら、「こんなことを聞いてもいいのかな」と遠慮せず、どんどん質問や相談しましょう。また、自分の進みたい進路に向けてどんな勉強が必要かもアドバイスしてくれます。「頑張って卒業したい」「勉強したい」という意思は、先生にとっても嬉しいはずです。
自分に合った通信制高校を選ぶ
お伝えしたように、特に私立の通信制高校は年々増加しています。もちろん学校それぞれの考えや方針があり、カリキュラムや学ぶ方法など、特色も異なります。例えば大学進学に力を入れている高校や、就職を応援している高校、授業の時間やスクーリングの頻度を調整しやすい高校、生徒同士が交流できるようなイベントや企画が多い高校など、そのスタイルはさまざまです。
「どの通信制高校が自分に合っているかわからない……」と迷うかもしれませんが、自分の目標や悩みを考え、それをサポートしてくれるかどうかで選ぶと良いかもしれません。
通信制高校に進学するメリットとは?
ここからは、通信制高校における特徴(通うことのメリット)をご紹介します。「全日制高校と全然違う!」と驚くかもしれません。
入学するのは難しくない
通信制高校の場合、全日制のような学力検査(英語や数学などのテスト)をするところはあまりありません。そのため、入学前の学力に自信がなくても、そこまで心配することはないでしょう。
ただし、対策しておくべきものもあります。通信制高校の入学試験は書類選考の他に、面接や作文を行うところが多いようです。ここで学校側が特に知りたいのは「志望動機」です。「なぜこの学校を選んだのか」「この学校でどんなことを実現したいか」その気持ちをきちんと整理しておくとよいでしょう。
自分に合ったスタイルで学べる
通信制高校の最大の特徴は、生徒自身で時間割を決めたり、登校する頻度(ペース)を選べたりと、自分にあった勉強スタイルを作れることです。そのため健康面に不安のある人も、体調を見ながら勉強することができます。またすでに社会人として働いたり、スポーツなどに打ち込んだりする人も、うまく時間を調整しながら学べるのです。
しかし、ここでは注意が必要です。それは規則正しい生活を心がけ、スケジュール通りに勉強を進め、レポート提出や試験に向けて準備すること。自由の中にもルールを設けることが大切です。せっかくのメリットをデメリットにしないよう注意しましょう。
多数の専門コースがある
近年、通信制高校では専門的なジャンルを学べる専門コースがたくさん誕生しています。例えばファッションやダンス、eスポーツ、アニメや漫画を学べるコースなどさまざま。「将来こんな仕事がしたい」と明確な夢を持っている人が学べるのはもちろん、「趣味をもっと楽しみたい」という人も受けることができます。
興味のあることをもっと知れると思うと、勉強へのモチベーションも上がりそうですね。
さまざまな人がいることを学べる
病気やケガ、人間関係の悩みなどで毎日学校へ通うのが難しい人、一度は高校を諦めて社会人になった人……。通信制高校には、さまざまな理由や目的で通う生徒がいます。中には、一般的な高校の年齢よりずっと年上の人がいるのも珍しいことではありません。
そういった点で、通信制高校へ通えば価値観が変わるのではないでしょうか。「普通はこうでなければならない」といった固定観念を持ったり、「自分は周りと違うから……」と悩んだりすることも少なくなるでしょう。もっと楽な気持ちで学ぶことができそうです。
通信制高校なら、開志創造高等学校
開志創造高校は、4つの大学、34つの専門学校、2つの高校のノウハウと約50年の教育実績をベースにした広域通信制高校です。
教育理念「開志・自律・創造」のもと、自ら問題を発見・解決し、新たな視点・価値を創造できる人材の育成を目指し、職業探求専攻、高校・大学連携専攻、アニメ・マンガ専攻、eスポーツ専攻、アスリート専攻など、8つの専攻を展開しております。
また、高校生活に関する相談はスクールカウンセラーが、学び・進路に関する相談は担任、職員しっかりとサポートする体制により、進路未決定率0%を実現します。
まとめ
「通信制高校へ行ったら人生終わり」と心配されている理由と、通信制高校を成功させるためのポイント、そして通信制高校へ通うメリットをお伝えしました。
「どうして通信制高校へ行きたいと思ったのか」「自分はどんな高校生活を送り、何を実現したいのか」このあたりは、自分なりの気持ちを見つけておきましょう。面接で答えるのはもちろん、高校生活での目標や支えになるかもしれません。